相続が発生した際に行う手続きの一つに不動産の相続登記(名義変更)があります。
しかし、相続登記は多くの方が一生に1度か2度しか経験しないことのため、どのような書類を用意すればいいかと困惑される方がほとんどではないでしょうか?
この相続登記を行わなければ、不動産を売却をすることができなかったり、担保として融資を利用することもできません。
上記の書類は用意をするのに手間と時間がかかるものが大半です。
専門家へ相続登記手続きの依頼を考えている人も、自身で集めることができる書類を準備してから依頼する方が費用を抑えることができます。
この記事では相続登記に必要な書類の解説と取得方法を解説しています。
必要な理由や取得方法や作成方法を理解し、書類の準備を進めていきましょう。
相続登記の4つのケース
相続登記にはさまざまなケースがあります。主なケースは次のとおりです。
- 法定相続分によるケース
- 遺言により法定相続人に相続させるケース
- 遺言により法定相続人以外に承継させるケース
- 遺産分割協議によるケース
これらの4つのケースでは必要書類も少しずつ変わってきます。
自身がどのような相続登記を行うか確認してから書類を整えていきましょう。
法定相続分によるケース
法定相続分の割合で相続登記をするケースの必要書類は下記のとおりです。
遺産分割協議をする場合よりも必要書類が少なくなっています。
必要書類 | 備考 |
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍 | 出生まで遡り本籍地の役所で取得 |
被相続人の住民票の除票 | 被相続人の最後の住所地の役所で取得 |
相続人全員の現在の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地の役所で取得 |
相続に全員の住民票 | 各相続人の住所地の役所で取得 |
固定資産税評価証明書 | 所有している不動産所在地の役所で取得 |
遺言により法定相続人に相続させるケース
遺言により法定相続人に相続させるケースの必要書類は下記の通りです。
被相続人の戸籍謄本が出生まで遡る必要がないため、書類集めが非常にラクになっています。
必要書類 | 備考 |
遺言書 | 自筆証書・秘密証書の場合は検認済みのもの 公正証書の場合には検認不要 |
被相続人の死亡時の戸籍謄本 | 出生まで遡る必要はありません。 |
被相続人の住民票の除票 | 被相続人の最後の住所地の役所で取得 |
遺言により相続人する相続人の 現在の戸籍謄本 | 相続人の本籍地の役所で取得 |
遺言により相続する相続人の住民票 | 相続人の住所地の役所で取得 |
固定資産税評価証明書 | 所有している不動産の所在地の役所で取得 |
遺言により法定相続人以外に承継させるケース
遺言により法定相続人以外に承継させるケースの必要書類は以下の通りです。
遺言で相続人以外の第三者へ相続するケースでは、登記原因が「相続」ではなく「遺贈」となります。
また、相続を原因とする登記手続きでは必要がなかった権利証(登記識別情報通知)が必要となります。
必要書類 | 備考 |
遺言書 | 自筆証書・秘密証書の場合は検認済みのもの 公正証書の場合には検認不要 |
被相続人の死亡時の戸籍謄本 | 出生まで遡る必要はありません。 |
被相続人の住民票の除票 | 被相続人の最後の住所地の役所で取得 |
権利証(登記識別情報通知) | 詳細は権利証と登記識別情報通知の違いとは?を参照 |
遺言により相続する受遺者の住民票 | 受遺者の住民地の役所で取得 |
被相続人の相続人全員の印鑑証明書 | 相続人の住所地の役所で取得 |
被相続人の相続人全員の現在の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地の役所で取得 |
固定資産税評価証明書 | 所有している不動産の所在地の役所で取得 |
遺産分割協議書によるケース
遺産分割協議をして相続登記をするケースの必要書類は下記のとおりです。
権利証(登記識別情報通知)は原則として添付書類とはなりません。
必要書類 | 備考 |
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍 | 出生まで遡り本籍地の役所で取得 |
被相続人の住民票の除票 | 被相続人の最後の住所地の役所で取得 |
相続人全員の現在の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地の役所で取得 |
遺産分割協議の結果、相続する人の住民票 | 相続人の住民地の役所で取得 |
遺産分割協議書 | 相続人全員の署名押印が必要。 原則司法書士が作成します。 |
相続人全員の印鑑証明書 | 相続人の住民地で取得 |
固定資産税評価証明書 | 所有している不動産所在地の役所で取得 |
必要書類の取得方法
自身に合った相続登記の必要書類がわかれば、次にそれぞれの書類について必要な理由や取得方法について見ていきましょう。
登記事項証明書
取得場所:法務局 費用:1通600円
法務局に提出する相続登記申請書を作成するには不動産の正確な地番や家屋番号を記入するために必要な書類です。
なお、登記簿謄本は提出する必要がないため、年に一度届く固定資産税納税通知書でも代用できます。
詳細は登記簿謄本(登記事項証明書)とは?見方や取得方法を解説を参照。
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本・原戸籍)
所得場所:本籍地の市区町村役場 費用:1通450円
相続が発生した際に相続人を特定するために必要な書類です。
戸籍は結婚や本籍地の移転、法律の改正などにより新しいものが作られるので必要書類を集める際に難航するケースがあります。
新しい戸籍(死亡時)から古い戸籍(出生時)に遡っていく方法で取得しているとスムーズに集めることができます。結婚や離婚をされている方は複数の戸籍を集める必要があるので注意が必要です。
- 現在戸籍謄本とは現在、戸籍に在籍している人が存在する戸籍です。
- 除籍謄本とは結婚や死亡によって現在の戸籍から外れ、全員いなくなった戸籍です。
- 原戸籍(改製原戸籍)とは改製される前に除籍した人や認知・離婚・養子縁組などに関する事項が含まれています。
被相続人の住民票の除票
取得場所:被相続人の最後の住所地の市区町村役場 費用:1通300円
住所登録された方が亡くなったという事実と、最後の住所地を証明することができる書類です。また、本籍地がわからない場合に、住民票の除票を取得して調べることができます。
住民票の除票の保存期間は令和元年6月より保存期間が5年から150年に変更されました。過去の相続登記を行う際に保存期間を過ぎて取得できない場合は、司法書士などに上申書を依頼する必要があるため、事前に専門家へ相談しましょう。
相続人全員の戸籍謄本
取得場所:相続人の本籍地の市区町村役場 費用:1通450円
相続人が親や子の場合、戸籍にある親子の記録を確認するための書類です。
親や子がいないか亡くなっている場合には祖父母や兄弟姉妹が相続人になるため、亡くなった親が生まれた時からの戸籍謄本も必要となります。
相続人全員の印鑑証明書
取得場所:相続人の住民地の市区町村役場 費用:450円
市区町村に登録された印鑑のことを実印と呼びます。この印鑑登録は一人につき一つの印鑑しかできないため、本人確認の意味合いも含んでいます。
印鑑証明書の有効期限は3ヶ月となっているため、法務局などに提出する際は取得年月日を確認しておきましょう。
固定資産税評価証明書
取得場所:所有している不動産所在地の市区町村役場 費用:1枚につき200円〜400円(役場によって異なります。)
登記をする際の登録免許税を計算するためや相続税の申告にあたり必要な書類です。
固定資産税評価証明書は不動産の所有者か同居家族しか取得ができないため、取得の際に戸籍謄本などで所有者のつながりを証明する必要があります。
まとめ
相続登記の必要書類は多岐に渡り、相続するケースによって少しずつ変わってきます。
一つでも書類が欠けてしまうと申請が通らない場合もあるため、専門家に依頼することも視野に入れてみましょう。
ただし、ゼロから専門家に依頼する場合と、書類を集めてから依頼する場合では費用が変わってくるため、本記事を参考に自身で集めるチャレンジをしてみてください。
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