相続とは予期せぬタイミングで来るものです。
いずれ来るとわかっていても事前に準備を進めることはできず、相続についての段取りを把握している人は少ないのではないでしょうか?
相続が発生すると、さまざまな手続きが必要となり、期限が決められているものがあります。
- 死亡届(7日以内)
- 相続放棄や限定承認の申し立て(3ヶ月以内)
- 遺産分割協議書の作成(2〜6ヶ月以内)
- 不動産の名義変更(遺産分割協議成立後)
- 相続税の申告(10ヶ月以内)
- 遺留分減殺請求(1年以内)
しかし、相続を経験されている方は少なく、何から始めたらいいのか?事前に集めておかないといけない書類は何か?などわからないことが多くあります。
この記事では不動産を相続する際の流れについて解説しています。
不動産などを相続することが決まってから慌てるのではなく、事前に不動産相続の流れを理解しておきましょう。
不動産を相続するまでの流れ
死亡届
死後7日以内に、市町村役場へ死亡届を提出します。
死亡届の提出は葬儀社が代わりに行うことが一般的ですが、用紙への記入は遺族が自ら行います。
死亡届は死亡診断書と同じ用紙になっているのでそこに必要事項を記入して提出します。何枚かコピーを取っておくと便利です。
遺言書の確認
葬儀が終わった後に行う必要があるのが相続の手続きです。
遺言書があった場合、内容によっては相続手続きに大きく影響します。
遺言 > 遺産分割協議書
遺言 > 法定相続人
故人の最後の意思のため、どんな取り決めよりも最優先となります。
万が一、遺産分割が終わった後に発見された場合、非常に煩雑な手続きが発生します。まずは最初に遺言書の有無を確認しましょう。
戸籍謄本を取得し相続人を確定
相続人を確定させるためには戸籍謄本が必要です。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本に加え、相続人全員の戸籍謄本を確認します。
取得した戸籍の内容を確認し、結婚や転籍などをして本籍が変わっていた場合には、そのひとつ前の戸籍を当該本籍の役所から取得し、順番に取得していきます。
それを繰り返して出生時の戸籍まで辿っていきます。
家族関係が複雑な場合、かなりの労力と費用が必要となります。
自身で取得するのが難しいようであれば、専門家に依頼することも可能ですから、頼れる専門家を探した上で相談してみましょう。
財産目録を作成
相続人が確定したら、財産目録を作成していきます。
財産目録は義務ではありませんが、作成する一番の理由は遺産分割協議の際の流れがスムーズになるためです。
親族内の話し合いで配偶者や子供一人で相続する場合は財産目録を作成しなくても問題ありませんが、遺産相続のトラブルにおいて多いのが、どれだけの資産があるのかを相続人達が正確に把握していない点です。
本当は隠し財産があるのでは?
自分の取り分は少ないのではないか?
このように猜疑心が生まれて、遺産分割協議がスムーズに進まなくなる可能性があります。
そういったトラブルを避けるためにも財産目録の作成をオススメしています。
遺産分割協議書を作成
遺産分割協議書とは、相続人全員で遺産分割の方法と相続の割合を決めていき、相続人全員が合意した内容をまとめた書類です。
遺産分割協議書の書式は決まっていませんが、相続人全員が署名し、実印を押印する必要があります。また、印鑑証明書を添付し、相続人全員で一通ずつ保有します。
遺産分割協議書が完成したら、内容の通り相続手続きを進めていき、不動産などの名義を変更していきます。
不動産の遺産分割は4つの方法がありますが、どの方法がベストか相続人全員の話し合いによって決定しましょう。
不動産の名義変更に必要な書類一式
不動産の相続登記の手続きに期限はありませんでしたが、2024年4月1日より相続登記の義務化が開始されます。
不動産相続を知った時期から3年以内に登記・名義変更を行わないと10万円以下の過料の対象となります。
現在すでに相続登記せず放置されている土地も無関係でなく、義務化の対象になるので、今のうちから対処しておくことが必要です。
不動産の名義変更に必要な書類
相続登記で不動産の名義変更に必要な書類は以下の一覧表のとおりです。
- 登記事項証明書
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 被相続人の住民票の徐票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産分割協議書及び相続人全員の印鑑証明書
- 相続関係説明図
- 固定資産税評価証明書
- 相続登記申請書
※事案によって必要な書類は異なります。
不動産名義変更の期間は1ヶ月〜2ヶ月程度が目安
不動産の名義変更は法務局へ申請することになります。
申請前に必要書類の収集や作成、書類の押印等の準備があるため、スムーズに進んでも1ヶ月程度は必要です。
必要書類が整い、法務局へ登記申請をした後も法務局の審査には通常1週間から2週間ほどかかります。※法務局の混み具合でさらにかかる可能性もあります。
また提出する書類に不備や不足があると、補正するためにさらに時間と手間が必要です。
面倒なことは専門家に任せたいという方は、司法書士へご相談ください。
相続税の計算方法
相続税とは財産を相続した人にかかる税金です。
亡くなった人が持っていた財産から非課税のもの、債務・葬式費用を差し引いたものに対して相続税がかかります。
ただし、相続税には基礎控除があり、相続財産が一定の金額以下であれば非課税=相続税ゼロとなります。
基礎控除額 3000万円+(600万円×法定相続人の数)
相続財産 > 基礎控除額 :相続税の申告あり
相続財産 < 基礎控除額 :相続税の申告なし
不動産の評価額を算出する方法
相続財産が預貯金だけであれば相続税の申告が必要かわかりやすいのですが、不動産を相続した場合、土地・建物の評価額を算出し相続税の計算を行う必要があります。
土地の評価額
路線価方式か倍率方式のどちらかによって算出されます。
路線価が定められている土地であれば路線価方式を用い、路線価が定められて居ない土地については倍率方式が用いられます。
建物の評価額
建物の評価額は、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。
固定資産税評価額は、不動産の所有者に毎年送られてくる固定資産税の納税通知書についている課税明細書の中に記載されています。
また、役所などで固定資産税評価証明書を取得することで確認することができます。
詳細は国税庁HP No4602土地家屋の評価を参照
相続税の申告と納付
相続税の申告と納付は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行うこととなっています。
また、被相続人の死亡の時における住所が日本国内にある場合の申告書の提出先、納税先はいずれも被相続人の住所地を管轄する税務署です。相続人の住所地ではありません。
相続税は、申告書の提出期限前に金銭で収めるのが原則です。
なお、この期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たるときは、これらの日の翌日が期限となります。
申告期限までに申告をしなかった場合や、実際に取得した財産の額より少ない額で申告をした場合には、本来の税金の他に加算税や延滞税がかかる場合があるのでご注意ください。
詳細は国税庁H P No4202相続税の申告のために必要な準備、No4205相続税の申告と納税を参照。
まとめ
この記事では不動産相続の流れや遺産の分け方、相続税について解説してきました。
不動産相続は所有者が思わぬ事故や病気に遭ってしまい急に訪れる場合があり、手続きも預貯金や現金のように簡単に分けることができません。
売却をしようとしても相続登記(名義変更)やどのように相続を行うかの話し合いを行わなくてはなりません。
また相続手続きを行なっている最中に相続人が認知症になってしまうと相続が進まなくなり大変な思いをされている方もいます。
このように難しい不動産相続のおおまかな流れをおさえ、自身でできる部分、専門家に任せる部分をしっかりと見極め、適切に進めていくようにしましょう。
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